「何、ニヤニヤしまくってんだよ」
慧に笑われて、顔を引き締める。
慧は、百面相って言いながらブハッと笑った。
「な、なによ!」
「フッ、何か詩織が可笑しくてさ。
えっ、と、さぁ……
早く準備して、今日東京に帰るよ…いい?詩織」
それは、いろいろな意味で大きな意味を含んでいた。
明日、きっと慧は、アクションを起こすんだと思う。
だから、最後の語尾が小さめだったんだよね。
いつも自信気の慧が。
天下一俺様のあの、
間宮慧が。
「…うん、分かった。
…準備する……」
「うん…母さん、父さんゴメン……帰るわ」
「いいわよ」
「行ってらっしゃい、慧」
与一郎さんの声が、私の心まで響いた。
たった一言、紗智子さんと与一郎さんが言葉をかけてくれただけなのに。
当たり前の言葉なのに、嬉しくて嬉しくて、ひかりさんと広志さんに、堂々と会える気がする。
背中を押していただきました!