私は想像をして、その物体が額に乗ったのを思い浮かべた。
「冷たッ…痛ッ」
「俺も、全身の痛み忘れて飛び起きた」
私ばかりが不幸な少女だと、ずっと思っていた。
こんなことは言いたくナイけれど、慧は私よりもずっと幸せな家庭環境なんだと思ってた。
挨拶に行こう。
と言った慧の気持ちを、軽くなめていた。
私の家庭事情は花香が話してくれている。
でも、話し方によっては、どう思われているかは分からない。
“同情”で終わっている気がしていた。
私だけが、挨拶が辛いんだと思っていた。
だけど、慧も決して楽な家庭事情じゃない。
6歳しか変わらない人を、母親だと言わなきゃいけない事実。
その事実の前には、産みの親との別れがあったのだろう。
「そっから、だよ。
この人はこの人なりに、頑張ってるのかな?って思うようになって」
「うん」
「高校入るのをきっかけに、喋るようにした。
んで、なれない酒工場で頑張ってるあの人を、
6歳しか離れてないから抵抗あったケド、あの人の褒美として、母さんって呼ぶようにした」

