私が不思議そうな顔をしているのに気がついたのか、慧は私の額に手を伸ばした。
「熱あるワケじゃねぇーのにな、変な人だろう?」
「えっ?」
確かにそうだ。
私は別に、高熱を出して倒れたワケじゃない。
「あの人さ、母さんは出会った時から変な人でさ
中坊の俺からすれば、変人、変態だったんだよね」
胸の事件を思い出してるのか、少しだけ苦い顔をしていた。
私は紗智子さんの話を思い出して、クスリと盛大に笑ってしまう。
「…覚えてろよ」
「えっ!?今のは不可抗力だよッ!!」
身体にゾクリと悪寒が走る。
この瞳はヤバイですよねぇ…はい。
「俺、サッカー部だったんだけどさ、一回全身…って言ったら大げさだけど、全身グルグル包帯で帰ったことあってさ…
そん時、口なんか一切聞いてなくって、なのにあの人は勝手に焦ってて」
「……」
「夜、いつの間にか部屋に侵入しててさ、デコに冷たいの置いていくの」
慧は固く絞ったタオルを、私の額に置く。
「あれは痛かったなぁ…
タオルを一回濡らして、それを冷凍庫に入れてカチカチに凍ったタオル」

