花香は面白くなさそうに野菜をフォークで刺して食べる。
「私もあんたみたいに、溺れておけば良かった」
「ちょっと、人がワザと溺れたみたいに…ッ!」
「助けてもらって、
人口呼吸してもらって、お付き合い…
ケッ、
ドラマじゃあるまいし」
花香はミニトマトを口に入れると立ち上がった。
「前菜取ってくる」
「まだ食べんの?」
花香は頷くと、また新たに食べ物を取りに行った。
店員が不安そうに花香を見つめているのは、気のせいだろうか。
花香はいつだって、食べている。
私が海で溺れて死にそうな時にも、食べてたんだって。
いちご練乳のかき氷。
海の監視委員さんよりも先に見つけてくれたのが医者の彼。
本業を疑うくらいなキレイなフォルムで、私の所まで泳いでくれたらしい。
そして、ただ海から助けるだけでなく、心肺停止になった私に人口呼吸もしてくれた。
私にしていいか、悩んだらしいケド。

