母さんのテンションを、インターホンで感じるのはキツイ。
詩織も目を真ん丸くして、俺を見つめてるし。
「あんな感じだから…覚悟…しとけよ?」
「えっ?あぁ、うん」
勢い良く開かれた、大きな門。
古臭い錆びれた音と共に、母さんは姿を現した。
「きゃわぃぃぃぃぃ!!」
大型犬かよ、俺の母親は。
と、頭を悩ますくらいに、母さんは詩織に飛びついた。
「えっ、う、わっ」
救いを求めているのか、詩織は俺をチラチラと見つめる。
詩織には悪いが、母さんを止めるのは容易じゃない。
俺の母さんは、世で一番めんどくさいんだ。
「久々の女の子の匂い~やっぱいいわね、都会の可愛い女の子って」
「止めてくれ、詩織に俺の母親の趣味を勘違いされる」
「シオリって言うのね!!んま、名前も可愛いんじゃない!!」
「聞いてる?母さん」
そんな会話を聞いてか、さっきまでド緊張の表情を浮かべていた詩織が、声を上げて笑い出した。
俺と母さんは、顔を合わせて首を傾げる。