詩織は遠くを見つめて、深く考えている。
「詩織」
名前を呼んでも、詩織は今にも泣きそうな顔をしていた。
俺が強く抱きしめれば、詩織はニコリと微笑んでくれる。
でもその笑顔は、涙を堪える理由にしかならない顔だった。
「いいほうに考えて、いいのかな?」
「ん?」
「広志さんとひかりさんが笑ってたこと…
私達の結婚に、賛成してくれるっていう予知夢なのかな?
それとも、反対…され、ちゃう、の…かな?」
左頬に落ちてくる涙。
俺は拭いながら、詩織を力強く抱き締める。
詩織を壊してしまわない程度に。
「広志さんとひかりさんだけじゃない。
慧のご両親だって、何て言うか………」
「俺んちは平気だよ、
会えば、話せば、結婚しろしろ言ってんだから」
「私の過去を知っても?
慧のご両親は、私をよく知った上で…柿園詩織を慧の妻になることを、認めてくれる……?」

