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ん、と声が聞こえた。



俺もちょうど、長くて、遠い昔から帰ってきたところだ。




「詩織?」



「さ…とし?間宮慧?」




俺は何も言わず、深く頷いた。



すると詩織は起き上がって、俺を強く抱きしめた。



詩織が過呼吸になった時は、いつもこうだ。



まるで小さい子のように、詩織は俺の存在を確かめて


強く、抱きつく。




「どうした?怖い夢でも見たか?」



「う、ううん」



「ん?」



「広志さんとひかりさんが笑ってた」




それは、過呼吸後の詩織にとっては珍しいこと。



いつもなら、倒れて寝ている間、怖い夢しか見ていないのに。




「いい夢…って考えていいのかな?」



「ん?」



「いつも怖い夢だから、広志さんとひかりさんが出てきたのが初めてだから…判断がつかなくて」