苅谷は苅谷なりの視線で、詩織を見てきたのだろう。
じゃなきゃ、ここまで友達を思うことは出来ない。
俺が嫉妬するほどに、苅谷と詩織の間に絆が見えた。
「詩織は俺が幸せにする」
「…?何、急に」
「分からんケド、そう思った」
苅谷はきょとんとすると、フッと微笑んだ。
まるで、子の幸せを見届けるような笑顔で。
「そうね、幸せにしてあげて」
「あぁ」
「詩織があんたで泣いてたら、すかさず奪うから、そのへんは覚悟しておいてね」
ウインクすると、苅谷は立ち上がった。
伝票を俺の前に置いて、ニコリといやらしく。
「じゃ、お医者様よろしく」
「お、おい…!!」
「私の詩織貰うんだから、やっすいもんでしょう!!」
詩織と苅谷は、見た目が正反対。
でも性格は、一致しているのかも知れない。
一致していなくても、何か通じるモノがあるのかも知れない。
同じ施設で育ったから…だけでナイなにか。
不思議な血とも言えるモノが、詩織と苅谷には流れていると、
非科学的なことを、医者の俺は思ったのだ。

