詩織をきっかけに、何かを変えたかったのかも知れない。
否定され続けている自分達を…
「詩織が柿園になる前の苗字は、知らないわ」
「そ、うか」
「えぇ、言わないの。
言いたくないとかそんなんじゃないだろうケド…
柿園の両親に失礼だと、思ってるのかもね」
幼い頃から、自分の面倒を見てくれた人。
「広志さんとひかりさんには、子供が恵まれなかったからね、ひかりさんも大歓迎だったんだと思う。
普通は、旦那の妹…しかもワケありで、ワケありの子。
一般的に考えられないわよね、そんなお荷物のような子が、自分の戸籍上の子になるなんて」
“お荷物”と言った苅谷に、少し怒りを覚えた。
苅谷に怒っても仕方無いことなのに、何か一発言いたかった。
「………」
でも、そう言った苅谷が、
誰よりも傷ついた顔をしていた。
まるで、誰かから言われたかのように。
今にも泣きそうな顔で、唇を噛んでいた。
「ゴメン、彼氏という立場から聞いて“お荷物”は無いわよね」
「いや、別に」
「詩織が笑いながら言ってたから、自分も冗談範囲で言えるかなぁと思ったんだけど。
ダメね、私の人生じゃないのに、腹を切れば赤の他人なのに、冗談でも詩織を…
お荷物だなんて言えない」

