無理やりでも、詩織は笑わなくてはいけなかったのだろうか。
それとも、笑うのが久しぶりすぎて、ぎこちなくなってしまったのか。
「柿園…広志Hiroshiさんが、詩織の母親の兄なの」
「えっ?」
「奥さんはね、ひかりって言ってね、お互い名前のまんまの人達なの」
苅谷は出会ったことがあるのだろう、何度もフッと笑っていた。
広志とひかり。
会ったことは無いけれど名前を聞くだけで暖かくなれる…そんな人を想像した。
「広志さんも、ひかりさんも、詩織を探していたの」
「………」
「詩織の両親は親族達を信じるに信じれなくて、広志さんにも詩織の居場所を告げてなかったみたいだから」
教会に預けた時、詩織の両親は
何を思って
何を見て
何を感じて
詩織を預けたのだろう?
一緒に暮らせない寂しさ?
一緒に笑い合えない苦しさ?
いいや、違う。
自分達も子供の詩織も、認められていないことが辛かった。
詩織さえも否定する親が憎くて仕方無かったかも知れない。
せめて詩織だけは、
両家の両親に、きちんと自分達の子だと、言いたかったのかも知れない。

