苅谷から聞いた、柿園詩織の話をしよう。
彼女の過去をお話しようと思う。
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「詩織が教会の施設に入れられたのは、物心がついた5歳の時だった」
苅谷は病院の中にある喫茶店で、見た目からは考えられないブラックコーヒーを飲んでいた。
「私が施設に入ったのは6歳の時ね、詩織とは同い年だけど、お姉さん的存在だった」
俺は白衣のままで、苅谷の前に座り、返事もしないで呆然と聞いていた。
「私は、母親と父親が同時にリストラされて、私の教育費なんか出せなくて。
自分達が今日、明日を生きていくのに手一杯だったから、私を預けたの」
「…………………」
「期限は不明。
当時は、迎えに来てくれるかどうかも分からなかった。
施設のシスターに抱きつかれながら、両親を見送ったの」
苅谷は俺の瞳を見て、
『私の話には興味無いわよね、詩織の話…聞きたくてしょうがないんだ』
と、クスリと笑うと鞄から写真を取り出した。