慧は首を振ると、私を静かに押し倒す。




「そろそろ行かないとな」



「えっ?」



「詩織のご両親のとこ」



私は目を見開いて、慧を見つめる。




「行きたく無い?」



「…………………」



「それとも先に、俺んちから行くか?」




行きたくないハズが無いのに、素直に頷くことが出来ない私。



それはきっと、過去のせい。




「詩織………」



「分かってる、よ」



「詩織、無理しなくてイイんだよ」




無理してるつもりなんて無い。



なのに、怖い。




「ハァ、ハァ…スゥウハァ」


「詩織!
落ち着いて呼吸して」




息が上手く出来ない。


苦しい。

慧とキスしている時よりもずっと苦しい。




「詩織、起き上がって」


「ハァースゥハァハァ」




慧が背中をさすってくれているけれど、その体温でさえ感じられない。




「さと、し、辛いッ!」




ヤバいよ、本気で辛い。
死んじゃうよ………。



お母さん、お父さん
助けて………助けて!!!!