『先生になったら??』
女の子はそう言うと、母親なのか、一人の女性の所へ走って行った。
『将来、しおちゃんの病気治してね』
『医者になるなんて言って無いだろう……』
呆れながらも、女の子の後ろ姿に笑うしかない俺。
俺はぶっ飛んだ女の子のおかげで、医者を志すことが出来た。
『先生がメスを入れたんですよね?
全然分からないくらいに綺麗になりました』
手術をした何年後に、患者にそう言われるようになった。
それが今、俺の誇れる一つの事でもある。
医者として誇れる、たった一つのこと。
「どこぉ、ここ!」
裁縫の手を止めて、詩織の声を聞く。
焦っているのか、いつもより少し高め。
「詩織?」
寝室を覗くと、詩織は目を見開いて、俺を見つめていた。
俺のサイズのシャツは、詩織にはブカブカで、なんともそそる。
ボタンもちゃんとしまって無くて、胸元が見え見え。
「お、おはよう詩織」