荷物をそそくさとまとめ、苅谷は逃げるように店から出て行く。
その時鞄が机に当たり、いい音をたてて、何かが机の下に落ちた。
「あぁ?」
俺は机の下に潜り込み、光り輝く物に手を伸ばす。
手にした瞬間、頭の中の糸がプツリと切れた気がした。
「指輪...取ってんのかよ」
詩織の左手を掴み、その薬指を見ると、やはり指輪は無い。
俺は指輪をポケットに突っ込むと、詩織の鞄を持って、詩織自身を引っ張った。
「痛いッ」
「.........」
「花香ぁ、痛いよぉ」
足もふらついて、呂律もよく回っていない。
よくココまで飲んだなぁ。
何故か、飲んでも食べてもいない俺が、すべて支払い。
店の外に出ると、詩織はその場にしゃがみこんだ。
「花香ぁ、もぉ無理ぃ」
「......」
目は開いてるんだよな?