式部先生は、男だとずっと思っていた。



いや、腕がいいから、てっきり男だと思っていた。



私のただの偏見だったんだけど。



そうだよね、医療の世界にも女の人いるよね。



腕がいい先生が、男だけじゃない。




「なんか、参ったなぁ」


「気にすること無いでしょう?

旦那は、腕がいい医者を見に行っただけ…」




花香は私にハンカチを渡すと、ため息をついた。


私は涙をポロポロと流して、下を見る。




「別に浮気が決まったワケじゃ、無い……」



「分がっでる」




花香は溜め息をつくと、伝票を持って立ち上がった。



私も涙を流しながら、花香の後に続く。




「今日は奢ってやるから、あんたは旦那に電話しな!」



「えぇ……」



「いいからしなさい!」




花香に携帯を奪われ、彼に電話を繋げる。



私は絶句しながら、携帯に手を伸ばしたが届かずに、花香は笑顔で話だした。




「あんたの妻、泣いてるわよぉ!」