*捺亜




「行ってきます。」

「いってらっしゃい。…おい、暁。」

「…行ってきます。」

「いってらっしゃ~い。」






いつも通りの朝。




だけど、あたしはすぐ暁を見てしまう。




ぜったいキモイ。




わかってるけど、つい…。





気づかれないようにしよう…。





「捺亜、ちょっとこっち。」

「え?」




急に物かげに引き込まれた。





「意味わかんないし。遅刻するよ?」

「さっきから俺のこと見てるくせに。」

「なっ…!」





とっくに気づかれてたー…。




恥ずかしいです。 




絶対顔赤い。





「なんで見てたか言えよ。」

「やだね。」

「ふーん…。言わないならキスだけど。」

「えっ…。」




別に嫌なわけじゃないんだけど…。




初めてだから心の準備が…。





「は、はやく行こ?」

「言えって。」





この人意地悪そうな顔して笑ってまーす。




楽しんでる証拠です。





でも、密着してる体勢のせいで動けない。




策士め…。




「ほら、はやくしねーと遅刻だぞ。」

「…言えるわけないでしょ!バカ。」

「お前…その顔誘ってる?」

「意味わかんない…って、人来た!はやく!」

「ちっ…。」




舌打ちしたな、このやろー。




とりあえず逃げられてよかった。