それは、清らかな心の人間を見つけ出し、その力を借りる事」
「清らかな心を持った人間にはそう簡単に出会えるものではありません。
私には荷が重過ぎます」
エレーナは、ひどく戸惑った。
「巨大樹は、貴方が中間クラスにふさわしいと認めたのですよ。
私は、貴方なら絶対出来ると信じています」
エレガンス幹部は巨大樹を見上げた。そして最後にこう言った。
「皆さん、協力して少しでも清らかな人間を増やして下さい」
 
 学生寮に戻って来たエレーナ。
「エレーナさん、天上界はどうでした?」
プリシラはまだ、天上界が危機にさらされている事を、まだ何も知らなかった。
エレーナは何も答えられなかった。
「願い事が叶いにくくなる原因は、何か分かりましたか?」
プリシラはしつこく聞いてくる。
エレーナは、天上界へ行く前に、願い事がエラーする原因を調べてくると、プリシラに言っていたのだ。
エレーナとて、まさかこのような事態は想定していなかった。
今、本当の事を言えば、プリシラはひどく動揺するのではないか。
中間クラスの自分はある程度、力ためられるのでしばらく生きながらえる。
しかし、一般クラスのプリシラは、そうはいかない。
このまま、巨大樹の生命力が回復しなければ、天使達はいずれ滅びる。
本当の事を伝える、それはプリシラに対する、死の宣告に等しい。
あまりにも残酷な現実であった。
「巨大樹の生命力が著しく低下していて、願い事がエラーするようになったんです。でも、その原因は人間界の荒廃にあるようなんです」
エレーナは、エレガンス幹部から聞いた事を伝えた。
しかし、エレーナが伝えたのは、清らかな人間の心が巨大樹のエネルギーになっている事、そして、人間社会が荒れ、清らかな人間が激減した事まで。
天上界が滅び、やがて自分達が死ぬとは、エレーナの口からは決して言えなかった。
プリシラは、まだ生まれて2~3年しかたっておらず、希望や可能性に満ち溢れている。
それを、絶望に変えてしまうことなどエレーナには出来なかった。
「このままだと巨大樹はどうなるんですか?」
プリシラは聞き返してきた。当然来るはずの質問だ。
「力を失っているのは、齢をとって古い部分です。古い部分は、いつか自然に枯れます。
新しい根っこと枝は無事です」
エレーナはとっさにそんな事を口走ってしまった。
それは、あくまでも普通の植物の場合だ。