その時、シュウにまた異変が起きた。
シュウの霊体の色素が薄くなり、彼の向う側の景色が透けて見える。
それに気づいたエレーナは、
「これは、あの時と同じ!」
シュウが、斬り付け事件でエレーナの翼を治したいと願った時も、霊体が一時的に薄くなった。
シュウはなつみ捜索で、霊力を消耗していた。
しかしシュウ自身はそれに気づいていない。 
 
 天上界、契約管理室
「シュウの姿が薄く透けて見えただと?」
ジェシーが聞き返すとエレーナはうなずいた。
「やはり、お前も気づいていたか」
「シュウ君はどうなるんでしょうか? このままだと消えてしまうのでは?」
エレーナは心配でたまらない。
「シュウは、柚原なつみ捜索で霊力を使いすぎた。しばらく安静が必要だ。
今回で2度目だな。最初は、柚原に斬られたお前の翼を治したいってプリシラと
私に願った時。
お前はあの時、気絶していたから知らなかったかもしれないが、プリシラの力がなぜか著しく低下していて、お前の回復に時間がかかり過ぎ、シュウは、長時間の願い事で、霊力を消耗した。
私の手助けで何とかその場はしのいだが」
シュウが自分のために霊力を消耗、一時消滅しかけた事をエレーナはこの時初めて知った。
ジェシーはさらに続けた。
「それにしても、願い事を叶えるのにあんなに時間がかかるのは通常ではありえない。
あの時、何でプリシラの能力はあそこまで低下していたんだ?
天使の能力はそんなに低いものじゃないはずだが……」
ジェシーは首をかしげた。
その時、エレーナが、  
「そういえば、この間、私もシュウ君の願い事がエラーで叶わず、2度目で叶えたことがありました」
「エレーナ、お前もか?」
ジェシーは驚き、
「だが、お前は能力は低下してはいない。なのになぜだ?
分からん。いったい、何が起きているんだ!」
ジェシーは血眼になって原因を調べ始めた。