なつみと両親は互いに喜びあった。
「こんなに傷だらけになって」
母親がなつみをいたわった。
「私は平気。真紀やみんなが助けに来てくれたから」
なつみは元気を強調して見せた。
そして、しばらく何か物言いたそうなそぶりを見せた。
それから思い切って、こう言った。
「あのう、お願いがあるの。真紀を追い出さないで。
真紀はみんなの協力を得ながら、必死で私を捜してくれた。
だから、こうして帰ってこれた。
それに、あの事件で真紀は私に無理やり従わされただけ。
見張り役で直接誰も傷つけていない。
私が一番悪いのに、真紀が追い出されたんじゃ、私、明日から学校に行けない。
だから……」
なつみは、必死で親を説得した。
「僕からもお願いします」
その光景を見ていたシュウもなつみの親を説得し始めた。
「護身刀は、決して失くした訳じゃありません。
今は本家で預かっています。中沼さんを通して返還させます。ですから……」
「ちょっと待って! エレーナさんを傷つけた刀を返しちゃうなんて絶対だめです!
また、誰かに怪我でも負わせたらどうするんですか!」
プリシラが異議を唱えた。
エレーナが、プリシラの袖をつかんで、首を横に振った。
「でも……」
プリシラは納得がいかない。
「なつみさんは、もうあんな事はしません。私には分かります」
エレーナになだめられたプリシラは、不満げな表情を浮かべながらもそれ以上反対しなかった。
「私達からもお願いします」
エレーナ、黒川、さらには、千鶴、市川までもが懇願した。
まなみは、斬り付け事件で、体育倉庫に閉じ込められた。
「市川さんまでどうして、私は、あんたにあんなひどい事したのに」
「なつみさん、それに真紀さんは、私にとっても、大切なクラスメイトだから」
なつみの父親はこう言った。
「なつみ、貴方は良い友達に恵まれた。それをこれからも大切にしなさい」 
「じゃあ?」
なつみの両親は静かにうなずいた。
「良かった!」
その場にいた皆は互いに喜びあった。
なつみも真紀と手を取り合って喜んだものの、なつみから笑顔はすぐに消えた。
彼女はまだふにおちないところがあった。
自分が赤ん坊の頃の写真に、なぜ黒川が写っていたのか、解明出来ていなかったのを思い出したからだ。
 
 「なつみさんと真紀さん、本当に良かったですね」
エレーナがシュウの方を向いた。