エレーナは諦めに似た表情だ。
休憩が済むと5人は、仕方が無くなつみの後をゆっくりと追った。
皆、誰独り喋る者はなく、黙々と山を登り続けた。
5人の間にはどんよりとした重苦しい空気が流れた。
 
 やがて皆、山頂にたどり着いた。
一足先に山頂にたどりついていたなつみは息切れし、ベンチに大の字なると、空を仰ぎぜーぜー言っていた。
全身大汗びっしょりかいている。
「大丈夫ですか? そんなに無理なさらなくても」
心配してエレーナが差し出したペットボトルを奪うように受け取ると、一気に中の水を飲み干した。
「よっぽどのどが渇いていたんですね」
なつみがとりあえず元気だったのでエレーナは一安心した。
山頂で昼食を取る事になった。
なつみは、シュウやエレーナ達が一緒に食事をしようと誘っても、全く応じない。
互いに離れた場所で食事を取るなつみと真紀。
お互いますます気まずい雰囲気が漂った。
独り寂しく、山を眺めている真紀。
「私が学校に来るのは今日で最後。
自分はもう、なつみさんには必要とされていない。
なつみさんは、人が変わってしまった。昔はあんなんじゃなかったのに……」
真紀は独りごとをつぶやいた。
そんな光景を見ていたエレーナが話しかけてきた。
「隣、いいですか?」
真紀は少し驚いた表情で振り返った。
「聴いていたのか?」
エレーナは静かにうなずいた。
真紀はなつみと自分の生い立ちについて語りだした。
ふたりとも父親に棄てられ、同じ境遇だった事、真紀が幼少の頃、いじめられてばかりで、いつもなつみが体をはって、いじめっ子達から自分を護ってくれたこと、そしていつか、自分が強くなってなつみを護れるようになろうと剣術を志した事など。
「なつみさんの親に努力を認められ、彼女の護衛になった時は、大変嬉しかった。
私は、一生この人を護ろうと思った」
真紀は、なつみの斬り付け事件を止められなかったことで、護衛をクビになり、
退学に追い込まれた事を打ち明けた。
「全部貴方に責任を押し付けるなんて、ひどいじゃないですか」
エレーナにはどうすることも出来ず、真紀を見ているのが辛くなった。
「私は、事件をくい止めるどころか、状況に流されてしまい、
そばにいながら、なつみさんの苦しみをきちんと受け止められなかった」
真紀は自分を責めた。
「以前から、なつみさんについて行くのは限界を感じていた。