シュウの提案で、寮の真紀の部屋に様子を見に行く事になった。
「柚原さん、貴方も来て下さい」
プリシラが柚原の腕をつかみ、連れ出そうとしたが、
「何で、私が行かなければならないの!」
「もとはといえば、貴方が原因なんですよ」
「嫌よ、絶対いや!」
なつみは、激しく抵抗した。
「プリシラさん、なつみさんの事は、今はそっとしておきましょう」
「でも……」
シュウの言葉に、プリシラは、なつみの腕を放した。
シュウとエレーナ達は、真紀の部屋へ行った。
ベルを鳴らしても反応が無い。
「あれ? 真紀さん居ないのかな」
ドアを叩いた。
「真紀さん居るんでしょ? みんなで心配して来ました」
シュウの呼び掛けにもやはり反応がない。
「仕方がない。明日、また来ましょう」
次の日、やはり真紀は来ない。
「3日も来ないなんて、絶対おかしいですよ。先生に頼んで鍵を開けてもらいましょう」
シュウはそう言うと、教師に鍵を借りに行った。
みんなで真紀の部屋を訪れると、シュウは、ドアの鍵を開けた。
だがそこに真紀の姿はなかった。
シュウは部屋の中を見渡した。
「誰もいませんよ」
プリシラも部屋の棚を開けたり閉めたりし、
「荷物も無くなっています」
「何か、あったんでしょうか?」
エレーナは心配になった。
遠足の日は近づいていた。

 その頃、なつみは、自宅に戻っていた。
古いアルバムを取りだし、眺めるなつみ。
幼き頃のなつみが写っている写真の数々。
そして、なつみの傍らには、いつも真紀が写っていた。
幼なじみであり、親友であり、そして主と部下。
なつみと真紀は、互いに相手を良く理解し、深い絆で結ばれていた。
それが今、引き裂かれようとしていた。
真紀があの事件の責任を取らされ、柚原家を追い出されるかもしれない事はなつみも知っていた。
なつみは、余計な事を忘れ、しばらく写真を懐かしんでいたが、やがて我に返った。
「何よ、あんな奴。どこにでも好きな所へ行けばよいわ」
なつみは、さらにページをめくった。
すると、1枚の写真が出てきた。
「これは!」
なつみの赤ん坊の頃の写真だ。
写真は、柚原家の家族と一緒に写った物で、背景からどこかの病院のようだ。
ベットには、なつみの母親と思われる女性が赤ん坊の頃のなつみを抱いて座っていて、柚原家の家族がそれを取り囲んでいる。