エレーナとプリシラが、プールサイドでなつみに姿を見られて以降、シュウに天使が付いているというのは、クラス中に知れわたっていた。
当然それは、なつみがクラスメイト達に情報を流していたからだ。
エレーナ達は、少しずつ人前でも姿を現すようになった。
なつみの白川シュウ追い出し作戦の前段階として、市川まなみを退ける企ては、ことごとく失敗。
むしろ、クラス内で増える白川シュウ派と、柚原なつみ、いじめグループの求心力の著しい低下を顕すこととなった。
なつみは、エレーナ達にも敵対するようになった。
「この学校は元々女子高。生徒達は、みんな男子嫌い。学校側は共学化を測ったが、私達が実力で阻止した。
それなのになぜなの? なぜみんな白川を受け入れる? 最初はみんな白川を白い目で見ていたくせに」
なつみは、エレーナ達に噛みついた。
「あっ、分かった。白川に泣き付かれて、あんた達が妙な能力でクラスの人達を操ったんでしょ?」
無茶苦茶な言いがかりまでつけてくるようになった。
「ご主人様は、少しでも学校に溶け込もうと努力しているわ。
貴方に無理やり女装させられても、前の荒れた学校には戻りたくないと、文句ひとつ言わずに頑張っている。
クラスの人達が変わったのは、ご主人様が誰からも好かれる性格なのと、涙ぐましい努力をしたからよ。
それを何よ。私達は、うしろめたいことは何もしていないわ」
なつみの心ない発言にプリシラは、激怒。
シュウを主と思って仕えるプリシラにしてみれば、我が主をこれだけ悪く言われれば我慢がならない。
「だったら、どうして学校まで天使が付いてくるの?
寮でも、どこへ行くにもいつも一緒。まるで、白川の保護者みたい。そんなの必要ないでしょ」
「それは、シュウ君が幼いころから病弱だからです」
エレーナはそう説明したが、なつみは納得がいかない。
「うそよ! いつもぴんぴんしているじゃない」
確かにシュウは病弱だった。でも、それはエレーナ達と契約した時の話。
今のシュウは幽霊だから、病気などしない。
エレーナは自ら墓穴を掘ったような気がしながらも弁明し続ける。
「でも、最初は結構休んだでしょ。今は、病状が落ち着いているだけです。
何時、また悪くなるか分からないのです」
エレーナは、必死に説明したが、なつみは不満な表情。
「ふーん」
あまり納得していない様子だ。