エレーナ再びそれぞれの想い

エレーナは、シュウの手を握るとゆっくりと舞い上がっていった。
空高く飛ぶふたり。
夜空を星がまたたき、眼下には街灯りがふたりの前に大きく広がる。
「きれいだな。夜景がこんなにきれいだなんて」
「私もよく夜空の散歩をするんですよ」
ふたりはさらに高く飛び、雲の上に出た。
雲の上には月が浮かび、遠くには赤いランプを点滅させながら、飛んで行く夜間飛行のジェット機。
「あっ飛行機！」
シュウがその光景に思わず声を上げた。
「すごい、エレーナさんどうしてこんな事が出来るんですか？」
「私、天使ですから」
エレーナは微笑んだ。
「少し、遠くへ行きませんか」
エレーナに誘われ、さらに遠くへ。
街の灯りは、何時しか途切れ、郊外の家々の灯りが点々とする。
ふたりは山を越えると、シュウの実家がある田舎まで来た。
「あっ、あれ、僕の実家です」
シュウが指をさす。
白川一族の家々にも明かりが灯る。
「母さん達、今頃どうしているかな」
再び山を越え、街の灯りが見えてくる頃、
「そう言えば昼間も窓の外を眺めていましたよね？」
「エレーナさん、見ていたんですか？」
シュウとエレーナは名陵学園由乃高校の校舎の屋上に降り立った。
「僕、子供の頃から病弱で学校も休みがちで、だから窓の外を見て過ごす事が多かったんです」
そう言って遠くを見つめるシュウの瞳は、どこか寂しげではかない……
「そうだったんですか」
「今も体調が悪くて、明日学校に行けそうに無い」
「行けますよ。体の具合、きっと良くなります」
エレーナは、シュウを寮まで送り届けた。
「今日は、ありがとうございました。夜の散歩楽しかったです」
「もし宜しければいつでもお供しますよ」
「ありがとうございます」
嬉しそうに微笑むシュウ。
この感じは……
エレーナは、シュウからさっきより、さらに強い波動ものを感じ取った。
何かこう暖かい、そして懐かしいような感じ……。これは一体何？
そして、シュウの瞳の奥にひそむ、愁い帯びたもの（悲しみのようなもの）とは……