しかしそのまま突き抜けてしまったような奇妙な感覚……
「今のは何だ? 気のせいか?」
真紀は、我に返ると再びシュウに向かって行った。
だが、またしても同じような奇妙な感覚に襲われた。
「まただ!」
何度やっても同じ事の繰り返し。
「一体どうなっているんだ?」
シュウが幽霊であることに、真紀は全く気づいていない。
幽霊は元々実態がないのだから、木刀が当たる訳ない。
「どうして貴方と勝負しなければならないんですか? 僕は貴方と戦う気はありません」
真紀は、はっとした。
声のある方を振り返る。数メートル離れた斜め後ろに立つシュウ。
「貴様、いつの間に!」
結局真紀は、この時シュウに一撃も与えられなかった。
「ちょっと、何で倒せないの! あんな奴コテンパンにやっちゃって!」
なつみの怒号が体育館に響きわたる。
その時突然、
「そう言えば、もうすぐ剣道の地区大会が近いですよね」
シュウは何を考えたのか、真紀の気を引くような話題を持ち出した。
「それがどうした」
「だから、強い相手と特訓したいんじゃないですか?」
地区大会の話などを持ち出し、シュウが何を意図としている分からなくなった真紀。 
「ほら、剣道部は部員少ないですから、練習にお困りでしょう」
さっきまで一方的に攻められていたとは思えないほどに、穏やかに話しかけてくるシュウに真紀は戸惑った。
シュウは満面の笑みを浮かべてさらにこう言った。
「貴方には、僕なんかよりもっとふさわしい相手がいますよ。
明日、放課後この場所で待っていて下さい」
こいつ、何を考えている?
真紀は、シュウを追い詰めていたはずが、何時の間にかシュウのペースに乗せられているような気がした。