柚原なつみは、どうやってシュウを追いだそうか考えていた。
「あいつがいる限り伝統ある女子高の秩序は守れない。みんな、あいつを追い出す方法を考えて」
なつみは仲間を集めてそう言った。
一ノ瀬真紀が名乗り出た。
「ならば、私にお任せ下さい。この剣を使えば、奴も必ずねを上げるでしょう」
真紀は、剣道、居合切りの達人で、転入したばかりのシュウの、のど元に剣を突き付けた人物だ。
「じゃあ、頼んだわよ」
なつみと仲間たちは固い絆で結ばれていて、一種の上下関係すら見受けられる。
特に真紀は仲間というより、なつみの護衛そのものだ。

 放課後なつみは、シュウを無理やり連れ出そうとした。
「あんた、これから私と一緒に来なさい」
なつみは、シュウの腕を無理やり掴んで引っ張って行こうとした。
だが、シュウを捕まえられない。どうしてもかわされてしまう。
それもそのはず。今のシュウは幽霊だ。
しびれをきらしたなつみがついに、声を荒らげた。
「あんた、この学校に居られなくなってもいいの!」
シュウは、仕方がなく、なつみについて行った。
エレーナ達もシュウを心配して、姿を消してついて行った。
連れて行かれた場所は体育館。
真紀が袴姿で既に待機していた。 
「あんた、最近運動不足でしょ。全然筋肉ないし。いいわ、私が鍛えてあげる。
真紀、こいつを鍛えてあげて」
真紀は静かにうなずくと、そばにあった木刀をシュウの足元に投げた。
「お前も太刀を取って我と勝負せよ!」
シュウめがけて木刀を振り上げ走り出した。
「ご主人様、危ない!」
プリシラが攻撃を防ぐべく結界を張ろうとした。
「プリシラさん、やめて」
エレーナは、プリシラを制止した。
「どうして止めるんですか」
契約者を危険から守るのも天使の役目。
プリシラは、なぜエレーナが制止したのか、理解出来ない。
エレーナは、落ち着いていた。
「シュウ君は幽霊です。木刀はあたりませんよ」
シュウは真紀の木刀をスーッとかわした。エレーナの言った通りだ。
それでも真紀の木刀が、執拗にシュウを襲ういかかる。
シュウはそれをかわし続ける。
シュウの木刀は構えてばかりで動かない。
「よけてばかりでは私には勝てんぞ。これで終わりだ!」
そしてついに一撃をシュウに食らわした。そのはずだった。
真紀はこの時、妙な感覚を覚えた。
確かに剣はシュウに当たったはず。