やがて、力を失った天使から、次々と消滅し始めた。
わずかに力が残っている天使達も、幸い消滅は免れたものの、深い眠りについていく。
プリシラもかなり弱っていた。
もう起き上がる事すらできない。
シュウ、エレーナ達が付き添って看病する。
そこへ、イザベラ・エレガンス幹部が現れる。
とは言っても、立体映像のようで実体が無い。
「少しでも巨大樹を延命させるべく、私は、天上界を離れられません」
プリシラは、
「私は、ご主人様を幸せに出来ないばかりか、不幸を取り除く事すら出来ず、何の役に
も立てませんでした」
と、悔やむ。
「エスぺランサ、貴方は今まで良く頑張りました」
エレガンス幹部は、プリシラにそっと触れ労う。
「私は、その名前は嫌です。プリシラと呼んで下さい」
エレガンス幹部は、プリシラが産まれた時の事を話し始めた。
「実は、エスぺランサは巨大樹が最後に産んだ天使です。その頃から既に巨大樹の生命
力は低下し始めていて、以後、新しい天使は一人も生まれていません。
でも、私は天上界の将来を諦めていません。
だから、この子にエスぺランサ(希望)と名づけたんです。
でもエスぺランサは、この名前を嫌って、自らプリシラと名乗ったんです」
「だって可愛くないから」
プリシラは、不満げな表情を見せた。
「そうだったんですか」 
エレーナは、今まで全く知らなかった。
巨大樹が何時から天使を産まなくなったか、そして、プリシラの本当の名前も。
やがて、プリシラも消え始める。
「プリシラ!」
その場にいた皆が声を掛ける。
「私は、ご主人様を幸せにする事も、巨大樹を生き長らえさせる事も出来なかったけど
、エレーナさんなら、きっと出来るはず。私は、エレーナさんを信じています」
プリシラは、エレーナに希望を託し、静かに消えていく。
「プリシラ!」
エレーナが叫んだ。そして、みんなもプリシラの名を一斉に叫んだ。
プリシラは、完全に消滅した。暖かい光とともに。
皆が泣いた。