「エレーナ、貴方に渡したい物があります。
元々、上級クラスの天使が使う物ですが、貴方にも使いこなせるでしょう」
そう言うとエレガンス幹部は、宝石などの装飾がされた杖をエレーナに手渡した。
「これは……?」
「天使の杖。人が他者を思いやる純粋な想いを集める事が出来る杖です。
これを使って想いの力を天上界へ送るのです。
それにこの杖は、巨大樹の力をためたものでもあります。
巨大樹は、もう間もなく生命力が尽きるでしょう。その時、この杖が必ず役に立つでし
ょう」
だが、突然そのような物を手渡されても、どうやって使ったらよいか全く分からないエ
レーナ。
「お待ちください。どう扱ったらよいのか……。私には使いこなせません!」
しかし、エレガンス幹部は、
「今すぐじゃなくても、じきに使えるようになります。
貴方は自分では気づいていないかもしれませんが、上級クラスに極めて近い中間クラス
なのですよ。昇格は時間の問題です」
ウォーターランドのグラシアにも言われたことは本当だった。
「私が、上級クラスにですか?」
エレーナは自分でも信じられなかった。
エレガンス幹部から、自分が目覚ましい成長をしていると言われても、いまいち実感が
持てない。
「人の想いが持つ力を理解した貴方なら必ず使いこなせるようになります」
エレガンス幹部は、優秀な我が子を見守るかのように、エレーナを激励した。
以前エレーナは、天上界の幹部会で上級クラス昇格候補にされた事があった。
でもその時は、エレーナが自力で成長するのを待った方が彼女のためとの、エレガンス
幹部の考えから、昇格を見送られた。
「まさか、これを使う時が来ようとは……」
エレガンス幹部は、感慨深げに杖を眺めた。