シュウ君は幽霊になったのに、私はこうして生きてることにすら罪悪感を感じる……
シュウ君には幽霊ではなく、人としてもっと生きていてほしかった」
シュウの本当の死因が医療事故だったと知って、黒川も心を痛めていた。
「それは、私もです。私は、シュウ君を幸せにするどころか、かえって不幸にしてしま
った。
それなのに、シュウ君はどんな事があっても、文句ひとつ言わず、いつも困難を解決し
てしまいます。
いつもこちらが助けられてばかり。私は天使として何も役目を果たせないでいる」
エレーナもまた、自らを責めた。
そこへ、
「私も、話してよいでしょうか?」
エレーナ達が振り返ると、中沼が後ろに立っていた。中沼は、さっきからふたりの会話
聴いていたのだ。
「私は昔、エリートばかりの本家出身ながら落ちこぼれだった。
その私が、なぜか10代でシュウ様の世話を任される事になった。
シュウ様の学年が上がるにつれ、彼の勉強も見なければならなくなった。
元々、勉強が得意ではなかった私にとって、まるで自分が学ばせてもらうようだった。
運動神経が良いだけで、他は全然だめだった私を、なぜか、郁乃様と結衣様は信じてく
れたんです。
そして、シュウ様も……
いろいろ出来るようになったのは、こんな私を信じ、シュウ様の世話を任せてくれた郁
乃様とと結衣様のおかげなんです。
そして、何よりも私を成長させてくれた、シュウ様のおかげ」
一見優秀な執事見える中沼。その成長に深く関わっていたシュウ。
「そうだったんですか……」
エレーナは、感慨深げな中沼をつい見つめていた。
「シュウ様は強く、白川本家の誇りです」
中沼は誇らしげにそう言った。
黒川が「本当に強いよね」と言うと
エレーナも「本当にシュウ君は心が強いです」
皆、シュウの強さに改めて感心していた。

 天上界の巨大樹は、さらに深刻な状況になりつつあった。
巨大樹を取り囲むように立っている、巨大樹と同じ種類の若い木々が枯れ始めたのだ。
倒木や枝折れが発生するようになったのだ。
巨大樹が完全に枯れるまで、時は限られていた。