天上界、
「シュウが認識されていないだと?」
「はい、クラスメイト達に話し掛けても、誰も認識していないように見えました」
「ちょっと待っていろ。今調べてみる」
ジェシーは、契約管理システムのデーターを調べ始めた。
そして驚くべきことに気づいた。
「どういうことだ! 契約者に生命反応がない! 馬鹿な!」
ジェシーは、何度も端末試してみた。だが、やはり生命反応がない。
「エレーナ、落ち着いて聞くんだ」
ジェシーは、一呼吸間をおいてから、
「これらの状況から考えられることは、シュウは既に死んでいるということだ」
ジェシーの口から出た驚くべき事実。
「死んでいるってどういうことですか?」
「つまり白川シュウは、幽霊と考えてよいだろう」
エレーナは、ショックで言葉が出ない。
「そんな、私が契約した時は生きていましたよ」
「確かに。だがそれはあくまでも契約した時点での話だ。
だが、お前達の気がつかないうちに、あいつは絶命していたんだ。
まったく、幽霊との契約など聞いたことがない」

 エレーナは、シュウが病院に行った日のことを思い出し、ハッとした。
出かける前、あれだけ具合が悪かったのに、帰って来たときは、驚くほど元気だった。
シュウは、病院で寝たら、体が軽くなったとまで言った。
つまり、シュウは病院で寝ている最中に死んだのだ。
死んだのだから、病気などなくなって当然。
自らが死んだことにすら気づかないシュウは身が軽くなったと思い込んだのだ。

「まったく、ふたりも天使がそばにいながら何てこった。
幽霊だから、人には見えん。声も聞こえん。
だが、我々や霊力のある一部の人間には見える。
シュウの母親にも見えるんだ。
独り息子を溺愛し、その死を認めたくなかった。
だから幽霊になっても、生前と同じように接っしているのだろう。
最大の問題は、シュウが自分が死んだ事に、いまだに気づいていない点だ。
眠っている最中に死んでいるから、シュウは自分が死んだことに気づいていなかったという訳だ。
我々天使は、人間と幽霊を見分けることが出来る。
だが、シュウの発する波動に気を取られて幽霊になったことに気づかなかったんだ」