コンコン…
私は身だしなみを整えて、アパートの主の部屋のド
アをノックする。
出来るだけきちんとしないと…初日から嫌われたくない。
「はーい、少しお待ち下さい。」
ドアの向こうから、優しそうな女の声が聞こえて、ホッとする。
怖い男の人だったら、どうしようかと思った…。
私は安堵のため息を ついて、背筋をグッと伸ばす。
ガチャ
「はーい、どなた?」
「夜分に失礼ですが、103号室に引っ越して来ました、西崎愛花と申します。これから迷惑かけると思いますが、よろしくお願いします。…あの、これ、つまらないものですけど…。」
そう言って、私は、ここに来るまでにサービスエリアで買った、おまんじゅうのお土産を差し出した。
真っ白いモチモチしたお餅にしっとりとしたこしあんがつめてある普通のおまんじゅう。
だけど、試食で食べた瞬間に「これだ!」と思って買ったものだ。
「まあ…ご丁寧にありがとう。これからよろしくね。何かあったら、遠慮なく言って?」
「はい、ありがとうございます。すみません、お名前を伺ってもよろしいでしょうか?」
これからお世話になる人の名前くらい知っとかないとね。

