先程の激辛ドリンクの衝撃を忘れてしまう位の驚きだったのは、言うまでもない。
「一体誰が持っていったんだっ!」
アニキは真っ赤な顔をして、抜け殻のようになったヤスの襟首を掴んで、前後に激しく揺さぶった。
「たぶん、アイツです……」
たぶんというよりは、一目瞭然だった。
ヤスの指差した先には、バイクにジュラルミンのトランクを積んで、後ろに鶴田教授を乗せ、今にも走り出そうとしているシンの姿があった。
「アイツだ!!
逃がすな~!追え~っ!」
慌てて、倉庫の横に停めてある自分達の車へ向かって走り出すアニキ達。
「ちょっと!ヘルシードリンクは要らないんですか!」
その二人の背中に向かって、そう問いかけるゆみの声が聞こえた。
「うるせえ!今それどころじゃね~よ!」
そう言って一瞬後ろを振り返ったアニキの目の前に、二本のヘルシードリンクが放物線を描いて飛んできた。
「仕方がない♪今回はサービスしますよ♪」
「おっ♪本当か?
サンキュー♪」
鬼のような女達だと思ったら、意外といい所もあるじゃないか。
アニキ達は、マラソンランナーが水分補給をするように、走りながらそのヘルシードリンクを、一気に口の中に含んだ。
「オェェ~~~!!
不味い!!!」
「こちらは、センブリ、ニンニク、ドリアンをベースに、特にクセのある野菜を混ぜ合わせて作った健康飲料ですにゃ♪」
「鬼!悪魔っ!ドS女~!(泣)」
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