脱衣入れに一億円もの金が収まるか心配していたが、この銭湯の脱衣入れは意外と大きな物だった。
どうやら、コインランドリーと併設されている為に、洗濯物を入れた袋を持ち込む客への配慮が成されているらしい。
羽毛田は、あまり目立たぬように背中で脱衣入れを隠しながらトランクを押し込み、周りの人間をチラチラと見ながら服を脱いでいった。
(この中に犯人が居るかもしれねぇな……)
あまりに周りの目を気にする羽毛田の様子を見て、一人のサラリーマン風の男が小さな声で囁いた。
「あのオッサン、あんな強面の顔してて~実は、下の方は子供のモンみたいに小せぇんじゃねぇの~♪」
人に聞こえない程の小さな声で喋ったつもりだったが、服を全部脱ぎ終わって下半身にタオルを捲いた羽毛田は、鬼のような形相でそのサラリーマン風の男の方へと歩いて来た。
「おい!」
「は、はいっ!」
男は、殴られるのではないかと思って、体をこわばらせて目をつぶった。
「ん…?」
殴られるのでも怒鳴られるのでもない、数秒間の静寂に堪えられず、男はおそるおそる目を開けた。
「!!!!」
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