「昼間から風呂に入れるなんて、嬉しくて涙が出るよ!」
コンビニでタオルと石鹸を買い指定された銭湯の前に立った羽毛田は、まるでどこにいるかも分からない犯人に聞かせるかのように、嫌みな台詞を吐いた。
犯人が約束を守るという確証は無いが、ここまできたら、その薄い望みに賭けてみるしかない。
「クソッ…こんな事なら、黒崎を連れて来るんだったな……」
羽毛田は、しばらく銭湯の入口を睨みつけていたが、覚悟を決めて暖簾をくぐった。
「はい~♪いらっしゃい♪」
まるで良くできた置物のように、身動きひとつせず番台にちょこんと座った老婆に入浴料を払うと、羽毛田は指定された“三十番”の脱衣入れの方へ歩いて行った。
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