美容院『ヘッドバット』



入口のドアに付けられていた小さな鐘が、カラカランと軽やかに鳴った。


「いらっしゃいませーー♪」


中に居た数人のスタッフが、揃って爽やかに挨拶をする。


新しいファッション雑誌とヘアカタログが綺麗に整頓された、待合室のソファに羽毛田が腰を降ろすと、すぐに若い女性スタッフが笑顔を浮かべて近寄ってきた。


「いらっしゃいませ♪当店は、今回が初めてですか?」


「ああ…そうだが……」


「ありがとうございます♪…それで、本日はカットですか?それともパーマですか?」


羽毛田は一瞬躊躇した後に、その質問に答えた。


「ま…まぁ…カットだな……」


「シャンプーは、いかがなさいますか?」


「要らない……」


どこにでもある様な言葉のやり取りが済むと、やがてカットの席が一つ空いたようだ。


「お待たせしました♪…それではお客様、帽子とサングラスをお預かり致します♪」


女性スタッフは、笑みを浮かべたまま両手を差し出した。


「これでいいか?」


羽毛田は、スタッフに言われるままにサングラスを外し、ニット帽を脱いだ……