羽毛田は、襟元についた無線マイクを投げ捨てて、トランクを抱えたまま全速力で逃げ出した!
「おい!探偵が逃げたぞ!直ちに捕まえろ!」
それぞれの私服警官は、慌てて羽毛田の後を追った。
「待てぇぇ~!」
「チクショウ…こんなに警官がいたのか!
……こうなったら……」
羽毛田は、走りながらトランクの蓋を少し開け、ギッシリ詰まった新しい札束を、三束ほど掴んで取り出した。
「ほらっ!ご通行中のヤロウ共!
カネまくから、みんなで拾え~~♪」
人でごった返した平日の新宿駅で、何百という福沢諭吉が、まるで桜吹雪のように風に乗ってひらひらと舞い上がった。
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