すっかり犯人におちょくられてしまった羽毛田だが、今はそんな事に腹を立てている場合では無い。
「おい!金ならここにちゃんとある。早く取引に応じろ!」
『いやあ、こっちもそうしたいのはやまやまなんだけどね……
私服警官がウヨウヨいるみたいだしなぁ~』
私服警官の事は、羽毛田には知らされていなかった。しかし、犯人はその僅かな気配をしっかりと感じていたようだ。
「なにぃ~!
そんなに連れて来たのかよ!ヤマさん?」
羽毛田の、周りに聞こえる程の大きな声に、山下は思わず舌打ちをした。
「バカ……声がデカイよ……(汗)」
出来る事なら、人質も身の代金も無事に取り戻したい藪製薬。
とにかく犯人を捕まえ、人質を保護したい警察。
それに比べ羽毛田は、身の代金や犯人逮捕などどうでもよかった。
とにかく人質の鶴田教授を無事に救出し、発毛剤ノビールを完成してもらえれば良いのだ。
「おい!捕まえたりしねえからさ!早く金を受け取ってくれよ。」
『いやあ♪それはちょっと信じられないな~』
私服警官の存在を犯人に知られてしまった以上、この場での取引は限りなく不可能に近くなった……時と場所を改めるか、場合によっては人質に危害が加えられないとも限らない。
「クソッ……ちょっと待ってろ!」
どうしてもこの場で取引を成功させたい羽毛田は、このあととんでもない行動に出た!
「ああぁぁ~~っ!
何やってんだぁ~あの探偵はぁ~~っ!!」
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