展示スペースは意外に広かった。

客はチエミのほか、カップルが一組いるだけだ。

受付のそばには、ヒロユキの写真パネルがいくつか展示してある。

赤ん坊の頃のヒロユキ。

幼稚園服のやんちゃそうなヒロユキ。

体操服で疾走する坊主頭のヒロユキ。

見たことなどないはずなのに、チエミには懐かしかった。

そして、学生服を着て、カメラを睨むようなヒロユキのポートレート。

「ヒロユキ君…。」
チエミは呟く。

十二年振りの再会だ。

幼稚園の時、市の絵画コンクールで金賞を取った動物園を描いたクレヨン画に始まり、小学生の時、文部大臣賞を取った風景画。

輝かしい記録の数々がヒロユキの家族によって大切に保管されていた。

ヒロユキが大事にしていたというギターも展示してある。

一日中、数十枚のデッサンをしていた時期があったというエピソードが紹介されていた。

チエミの知らないヒロユキだ。

奥の方は高校生になってからの作品が展示されていた。

ヒロユキが非凡な絵の才能を持ち、確かに開花しはじめていた矢先の作品が並んでいた。

一本一本の線が躍動感に溢れ、生きている。

こんなに才能に恵まれていながら、たった一瞬の事故で、十七歳という若さでこの世を去らなければならなかったヒロユキがチエミには不憫で仕方なかった。

事故さえなければ…

今頃は…