チエミとヒロユキは友達なんかではない。

恋人同士だった。
わずか一ヶ月の間だけ。


付き合い出して、一ヶ月過ぎた時、突然連絡がとれなくなってしまったヒロユキ。

付き合っている間、チエミはヒロユキの家に電話をした事がなかった。

連絡が取れなくなってから、ためらいながら、一度だけ彼の家に電話をした事があった。

女の人が出た。

チエミは緊張しながらいった。

『河井と申しますけど、ヒロユキさんお願いします。』

しばらく沈黙したあと、女の人は
『今、忙しいんで。』
ぶっきらぼうに言って電話を切った。

あれはヒロユキの母親だったのだろうか。
チエミは怖くなり、もう二度と彼の家に電話しなかった。




そして、二ヶ月後、チエミはヒロユキの姉から電話で彼の死を知らされた。




ヒロユキの死を知った日から、チエミは自分が自分でないような感覚に囚われていた。

ハッピー公園の文字も、何時の間にか消されていた。

年の暮れに継母は流産してしまった。

そんな継母を父は気づかい、チエミなど存在しないかのようだ。

チエミはそんな父の思う通りになりたくなかった。

チエミは通っていた私立中学の附属高校ではなく、公立高校を受けたいとごねた。
父は、せっかく中学受験して入った学校だし、大学までエスカレーター式で行けるのだから、と反対した。

チエミは実力行使に出た。

学校を休み、何日間か家にこもると、あっさり父が公立受験を許してくれた。

チエミがずっと家にいたため、継母の神経がまいってしまったからだ。

自分の家だというのにチエミは居場所は、自分の部屋だけだった。