「でさ、昨日の子も恋愛系で泣いてたんだよ」


引き続きランチを食べる4人。

ラーメンを食べながら春樹が困ったように言う。


春樹は困ってる人をほっとけないタチで、昨日も放課後教室で泣いてる女の子に声をかけた。


「へぇ。春樹もほっときゃ良いのに」


秋人は素っ気なく言った。

たぶん知らない人が泣いてても素通りするであろう秋人には春樹の気持ちが到底理解できない。


「だめだよー!困ったときはお互いさまっ」
「でもさぁ春樹、困ってる人助けて春樹が困ったら意味なくない?」
「う…」


麻冬の最もな意見に春樹は何も言い返せない。

そして珍しくしおれた声で
「俺のやってることって無意味なのかなぁ…」と言った。

無邪気なくらい明るくて、一緒にいれば癒されるような春樹が落ち込むなんてそうそうない。

すると、パクパクとおにぎりを食べながら夏実が言った。


「はに言っへんのよ春ひー」


口にご飯が入ってる状態で喋っている夏実の言葉は何ともバカバカしい。

夏実はゴクンとご飯を飲み込んで春樹を見ながら言った。


「無意味なわけないじゃん。だってそれが春樹で、春樹の優しさなんじゃん」
「夏実…」
「あんたに落ち込む顔は似合わないっつーの。あたしまで元気なくなるわっ」


明るい春樹と元気な夏実。
2人が揃うとその場の盛り上がりは二乗になる。

校則違反しまくりっていうところでも息の合う2人。


「確かに夏実の言う通りね」
「まー俺にゃ考えらんねぇけど、春樹は春樹のしたいことすりゃ良いんだよ」


夏実に続けて麻冬と秋人も言った。

春樹は
「みんな…」と今にも泣きそうな表情をしている。

みんな性格が違っても、お互いを好いていることに変わりはない。

あのクールで何を考えてるか分からない秋人でさえ、他の3人には割りと心を開いている。


「みんなありがと」


へへ、と軽く春樹は笑った。


「ん〜でも恋愛を知らない春樹には難しいねぇ」


夏実はケラケラ笑いながらそう言う。


「やっぱいくら春樹でも恋愛相談だけは無理ねー」


楽しそうに言う夏実に、春樹はムッとしながら
「俺だって恋愛くらいするよ!」と言った。

夏実が面白半分でからかいながら
「じゃあ今も?ならお姉さんに言ってみなさい」と完全に子供扱いしながら言った。

なぜ秋人と麻冬が何も言わないのかと言うと、2人は真実を知っているからである。