「だから、下手をすれば一番弱い初級の魔術者にも負けるのよ」


スカーレットの言い分に、納得する二人。


「……って、何でアンタまで頷いてるのよ?」


胸の下で腕を組み、ウンウンと頷くフレイヤに対し、スカーレットの顔が歪む。


「まぁ、初級の魔術者にわざと負けてあげるのも、上級者の務め。と、思わない?」

「思わないわよ……」


何いきなり良いこと言った気になってんのよ……と、額に手を当てて苦笑する少女。

スカーレットがフレイヤを遠回しに嫌うのは、これがあるからだろうか?

それとも、ただ単に波長が合わないだけ?


「えっとー……。何話してたんだっけ? あぁ、もぅ」


サラダのコーンをフォークで器用に刺し、少女は脱力する。

そんなスカーレットに、フレイヤは立ち上がり──


「オーッホッホッホ! 何かよく分からないけど、勝った気分ですわ」

「うるさい!」


高笑いを始めた瞬間、飯屋の中が一瞬にして重苦しい空気となっていく。

急いで口を塞ぎ、席に無理矢理座らせるが……


「遅かった……」

「みたいだな」


スカーレットの嘆きに、グラガは頭を押さえて机に付したのだった。