《グランゼール町》


豊かな地アルカイド王国が一番に管理する薬の町として知られている。

食料や酒はもちろんだが、スカーレットたちが歩いて来た森には、自然に出来た薬草が大量にあるため、この町では薬が主流だ。


だが、薬と言っても怪しげな魔女がいる訳でもなく、風貌は綺麗なものだった。


「へぇ。港町でもないのに風車と見張り塔があるのね」


町のシンボルとも言えよう、巨大な風車と高い見張り塔を見上げ、スカーレットは感心した。

町の造りも基本はレンガ造りで、お世辞にも広いとは言えないが、中心には小さな噴水まである。


「王国管理一番町だからな。結構拡張やら物質支援やらしてるらしいぜ」

「ふーん。まっ、どうでもいいけど……とりあえず!」


グラガの付け足しに興味もなく、スカーレットは大きく伸びをすると、真っ先に入口に設置されている町の地図に目を見張った。


「酒場か?」

「違うわよ。腹が減っては戦は出来ぬって言うでしょ?」

「なるほど。飯屋か」


クエスト(仕事)を終えてまず冒険者が町に来て行く場所は、大抵が酒場なのだが、どうやら彼女は違うらしい。

地図で場所を発見したスカーレットは上機嫌で、早々と飯屋へ向かう。