篠原さんの目つきが変わったことに僕は気づかなかった。
蜘蛛が獲物を巣に捕らえたように、もう逃がさない……そんな目をしていたんだろう。
「そろそろ戻りましょう」
『はい』
立ち上がったとき篠原さんはポケットから何かを出した。そして僕に差し出す。
『?』
「お守りです。最近何かに悩んでるようだから」
そう、僕は悩んでいた。
あの日以来見続ける闇の夢、時々現れる奴に。
『ありがとうございます』
「なくさないでくださいね?仏様があなたを守ってくれますから」
俺の手をぎゅっと握り願うように言う。
「では、いきましょ!」
古い布製でできたお守り。
赤いお守りは今まで使ってきたようにぼろぼろだった。
仏様があなたを守ってくれますから

