慎一の両親、総一郎、和江夫妻が、突然再び帰宅した。
さやかは、両親に姿を見られるとまずいので、天使の能力で姿を消した。
彼女が天使として生まれ変わった事を、両親は何も知らないからだ。
あのふたりには、姉やエレーナの正体は、言えない。
特に欲深い父には、正体がばれたら何をされるか分からない。
慎一は危機感を抱いた。
「慎一、お前に話がある。以前も言ったが、父さんの仕事を手伝え。
父さんの会社は忙しくて人手不足なんだ」
だが、慎一は以前拒否していた。
「それは出来ない。父さんの仕事を手伝うつもりはない」
慎一は再度拒否した。
「慎一は、何もしていないんだからそれぐらいやりなさい」
和江も総一郎に従うよう、諭した。
「父さん達には悪いけど、俺はエレーナとの静かな生活を大切にしたいんだ」
だが、総一郎は認めない。
「いい加減あの女とは別れろ。あの女と一緒にいてもお前のためにならん」
「俺のためになるかならないかは、父さんが決めることじゃない。
俺は、エレーナに何度も助けられた。エレーナは俺にすごく良くしてくれる。
だから絶対に別れるつもりはない」
「少しは親の言う事を聞いたらどうなんだ? 親の手伝いぐらい当然だろう」
「そうよ、お父さんはわざわざ忙しい中、貴方のために来てくれているのよ。
お父さんの言うとおりにしなさい」
和江にも再三諭された。だが、慎一は拒否。
「散々勝手なことをやってきて、一度は捨てた俺を、自分達の都合で利用する気か。
今まで俺を散々ひどいめに遭わせ、親らしい事なんて何もしてこなかったくせに。
今更、親を名乗るな!」
彼は激しく両親と対立した。
「お前、言っていい事と悪い事があるだろう。それが親に対して言う事か!」
総一郎は、慎一の襟首を強くつかんだ。
「慎一さんのお父さん、やめて下さい」
見かねたエレーナが止めに入ったものの、
「うるさい! これは俺と慎一の問題だ。お前には関係ない」
総一郎は更に襟首を引っ張った。
「苦しい、放せ」
「慎一さんは苦しがっています。放してあげて下さい」
エレーナは総一郎の腕にしがみついた。
「どけ!邪魔だ!」
「アッ」ドーン!
総一郎はエレーナを突き飛ばした。はずみで彼女は壁に激突した。
「エレーナ!」
慎一は、総一郎を振り払ってエレーナの元に駆け寄った。
「怪我はないか?」
「いいえ、私は大丈夫です。それより慎一さんこそ」