エレーナの友人達が、天上界から訪ねて来た。
どうやら慎一に会いに来たようだ。
「貴方が慎一さん? 会ってみたかったんだ」
天使1が慎一に握手を求めた。
「慎一さんは、天使達の間ですごい人気だよ」
天使2が慎一の天上界での人気ぶりを強調。
相変わらず天使達の間で、彼の噂だけが一人歩きしているようだ。
「そうそう、この間慎一さんを殺そうとした幹部達が解任されたのよ」
天使3が突然、思い出したように言う。
「マイナスエネルギーを浄化出来なかったからって、あんまりだよね」
「慎一さんが、契約管理システムの改善に尽くしてくれたおかげで、
私達は、自由で安全な契約が出来るようになったのに」
天使1と2が口々に幹部達を批判した。
「あまりにもひどすぎるって、天使達の批判が高まって、
幹部会は抹殺を企てた幹部達を解任したの」と、天上界の近況知らせる天使3。
「そんなことがあったのか。エレーナ、知っていた?」
「いいえ、私は何も」
互いに顔を見合わせる慎一とエレーナ。
「それからね、後任にはイザベラ幹部が信頼する若手何人かに決まったの。
これで、幹部会も古い体質から少しは抜け出せればいいけれど、
まだ、古い人達の力は大きいから」
天使3によると、幹部会の世代交代はあまり進んでいないらしい。
「定期的に天上界に帰って様子を見てきたほうがいいんじゃないか?
何も知らないのはまずいだろう」
慎一は、エレーナに一時帰郷を勧める。
「そうですね。でも慎一さんを一人にするのは……」エレーナは躊躇う。
「大丈夫、姉さんもついているし」
その、さやかは、今日は遅くまで帰って来ない。天上界の用事で出掛けているからだ。
友人達との会話は、盛り上がった。
 そのうち夜になった。
今日はもう遅いので、天使達は宮原家に泊まることになった。
エレーナは、友人達が使う予備のふとんを探しに行った。
「慎一さん、予備の布団はどこですか?」
「奥の部屋の押入れにあるだろう」
「ありました。今持っていきますね」
その時、ガチャーン! 何かが激しく壊れる音がした。
「何があった?」
驚いて、エレーナの元に駆けつけた慎一。
床に散乱する、粉々に砕けたガラスケース、そして壊れた建築模型。
そばで、エレーナがぼう然と立ちつくしていた。
「あっ、これは俺の、何て事してくれたんだ!」
「ごめんなさい。布団を運ぼうとしてぶつかってしまいました」