女子中学生2「私達は、いじめられることなんてないよね?」
女子中学生3「うちら仲いいし、夏穂みたいにとろくないし」
女子中学生1「だいたい、いじめられる方が悪いんだよ。とろいし、足並み揃わないし、
みんなをいら立たせている。それに本人が気づかないからいじめられるんだよ」
こいつら、いじめられて傷つく人の事を全然分かっていない。
慎一は腹が立った。
「慎一さん、大変そうですね。私が何とかしましょうか?
貴方が、私にいじめをやめさせてと願えば、解決しますよ」
エレーナが慎一に願い事をするよう勧める。
「確かにそうすれば簡単だ。でも、人間てそんな単純じゃないんだ。
天使にもいろいろやり方があるように、我々にも人間流の解決方法がある。
俺はそのやり方でいく。エレーナ、力を貸してくれ」
「はい、では何をすればいいのですか?」
「分からせてやるんだ。いじめられる立場の気持ちを。
あいつらに自分達がいじめられる幻覚を見せてやれ。
仲の良かった友達や、自分がいじめた人に仕返しされる幻覚をな。但し怪我させない程度にな」
慎一が念を押した。彼女達を傷つけるつもりはない。分からせてやるだけだ。
エレーナが今までしまっていた羽を大きく広げた。そして大きな光の柱が発生した。
夏穂「え、何? この光?」
突然、女子中学生達の様子が変わった。
女子中学生1「やめて。もうやめて」
女子中学生2「ひどい、私達今まで友達だったじゃない」
女子中学生3「ごめんなさい、もういじめないから、だから許して」
ある者は、仲の良かった友達にいじめられ、またある者は被害者からの仕返しに遭う幻覚に苦しんだ。
彼女達はわめき出した。中には泣き出す娘もいた。
「あれ? この人達いったいどうしちゃったの? お兄ちゃん、何かしたの?」
やがて幻覚は消え、彼女達は現実の世界に引き戻された。
女子中学生1「あれ、私いったい……」
女子中学生2「私達いったいどうしちゃったんだろう」
「どうだ、いじめられる気分は? 今まで仲の良かった友達にいじめられたり、
被害者に仕返しされるする気分は。
これでわかっただろう? どんなにいじめが悪い事か。
人が他人を不幸にすることは、決して許される事じゃないんだ」
さっきまで、反抗的だった女子中学生達がまるで猫のようにおとなしくなっていた。
涙ぐむ娘もいる。
「もういじめなんかするなよ」