エレーナと仮契約を済ませ、ふたりで家に帰る途中の事だった。
公園の中を歩いていたら、なにやら女子中学生達が集まってもめているようである。
あれは持田夏穂では?
夏穂が、女子中学生数人に取り囲まれている。
彼女は、慎一の従妹で近くの中学に通う2年生だ。
慎一とエレーナは、しばらく彼女達のやり取りを見ていた。
女子中学生1「ウザイよ」
女子中学生2「ホント、足でまといだよね」
女子中学生3「あんたがいつまでたっても下手だからいけないのよ」
女子中学生1「そうそう、夏穂には素質無いんだからもう部活やめたら?」
なにやら部活の事でもめているようである。
女子中学生2「もう一緒に練習やりたくない」
いじめだ!慎一は直感した。
「夏穂ちゃん」
「あっ、慎一お兄ちゃん」
「何かあったの? もめているようだけど?」
話によれば、夏穂はブラスバンド部に所属しているが、なかなか上達せず部員達から、
責められていたようだ。やっぱりいじめじゃないか。
「お前ら、夏穂ちゃんがいくら下手だからって、ひどいんじゃないか?」
女子中学生3「誰? あんた?」
女子中学生達は、よそ者は引っ込んでいろ! と言わんばかりの目つきで慎一を睨みつけた。
「夏穂ちゃんは俺の従妹だ。下手だから部活をやめろとか、言い過ぎだろ」
女子中学生1「あんたには関係ないでしょ。それに本当に下手なんだもん」
「いつも、夏穂が間違ってばかりだから、私達何度も同じところばかり
練習させられる。部活が終わったあとも、居残り練習で帰してもらえないんだ」
女子中学生2は不満をぶちまけた。
女子中学生3「先生も、よくこんなの置いておくよね?」
女子中学生1「発表会も近いし、あんたのせいでみんな迷惑しているの。それが分かんないの?」
「だからそれがいじめなんだ。誰だって最初からうまく出来ない。お前らだってそうだろ?」
慎一は夏穂をフォローする。
女子中学生2「うちらは、最初からできたよね」
女子中学生3「夏穂は、うちらと違って一年の時からずっと下手だし」
「とにかくよってたかって一人を責めるは良くない。夏穂ちゃんを責めるのはもうやめろ。
そういうのをいじめって言うんだ」
慎一は女子中学生達を諭すが、奴らは聞く耳を持たない。
女子中学生1「そんなことあんたに言われる筋合いない」
「じゃあ、もし、お前らがいじめられる立場になったときのことを想像してみろ」