幸せになろう

　この事は、幹部会にも報告された。
幹部会は、非常に驚いた様子だったが、宮原さやかに慎一を説得させられないか議論になった。
「人間から天使に転生したという話は聞いたことがあるが、しかし、
宮原慎一の姉がそうだったとは……」
弟はマイナスエネルギーで天上界と対立、危機的な状況。その姉は生まれ変わって今は天使。
次から次へと起こる前代未聞の事態に幹部１は頭を抱える。
「彼女をここに呼べませんか。慎一の事態を話て、彼女に協力を求めるという訳にはいきませんか？
今の私達に出来ることといったらそれぐらいしかないでしょう」
幹部２が提案するものの、その場に手詰まり感が漂う。だが、危険性も指摘された。
「しかし、本当に慎一を説得出来るでしょうか？
もし、さやかが天使になったことがばれたら、慎一が受ける衝撃は計り知れません。
今のさやかは私達の一員。さらに慎一の不信感を招くでしょう。
きっと彼は、全てに裏切られた気持ちになり、そうなれば、
マイナスエネルギーの暴走は避けられません」
幹部１は、懸念を示す。
幹部１「いずれ、慎一を説得していく段階で、本当のことを話さなくてはなりません」
その時期が問題なんです」
幹部２「それなら、最初はさりげなく再会させて、少しずつ慎一の説得にあたらせると
いうのではどうでしょう？」
幹部１「いずれにせよ、宮原さやかが、慎一の天上界に対する不信を取り除けるかが鍵となります。
彼女にそれが出来るかどうか……」
幹部３「でも、今はさやかに頼るしかありません。とにかく時間が無いんです。
とりあえず彼女をここに呼びましょう」

　宮原さやかが、幹部会に呼ばれた。
幹部達から今までの経緯を全て聞かされたさやかは、弟の身に起きている、想像を絶する現実に
地の底に突き落とされた感じがした。
慎一の身を安じるさやかは、立っているのが精一杯で、エレーナとジェシーが彼女を支えた。
幹部会は、さやかに慎一を説得するように打診したが、無理にとまでは、言えなかった。
あくまでも彼女の意思を尊重するしかなかった。
天上界は、既に慎一を傷つけている。それが、大きな障壁となっていたのだ。
幹部１「しかし、本当に彼女で大丈夫ですか？
今は天上界の一員ですが、元人間。しかも宮原慎一の姉です。
弟に対する愛情から、私達を裏切る可能性だってあります」
幹部１は、リスクの大きさに躊躇う。あくまでも慎重派だ。