「正規契約は終身契約。決して軽いものじゃありません。
だから、慎一さんは、正規契約に慎重になったんです」
幹部3「だが、これは不適切な契約と言わざるをえません」
幹部1「貴方は、三つの不正をしています。このような契約は無効です。
今すぐ宮原慎一との契約を解除しなさい」
「お待ち下さい。これには訳があります。私の話を聞いて下さい」
エレーナが必死で弁解しようとするものの、
幹部1「いかなる事情があろうとも、このような不正は、認める訳にはいきません」
幹部達は決して応じず、しゃくし定規だ。

 なぜエレーナと慎一がこのような不正契約に至ったのか、疑問を感じた
ジェシー・クリスタルは、独自に調査を始めた。
契約管理官の仕事は、不適切契約、不正行為がないか監視すること。
そして、不正があった場合の経緯の分析、契約者との関係調査など多岐にわたる。
さらには、契約した人間の心理状態まで調べる事が出来る。
契約に関わる情報は、全て、天上界に伝わる仕組みになっている。
つまり、ブラックボックスのようなものだ。
情報分析をしていたジェシーは、ふたりの契約の以外な経緯を突き止めた。
「これは、どういうことだ」
ジェシーは、エレーナが過去に契約していた者を調べ始めた。
そして、慎一の前の契約者とのトラブルを突き止めた。
「まさか、こんなことになっていたとは」

 一方、幹部会では議論が続けられていた。
エレーナからの聞き取り調査だけでは不十分、
契約者本人からも、直接話を聴くべきとの意見が、多数出た。
「ジェシー・クリスタル、人間界に行き、宮原慎一をここに連れて来なさい」
幹部1がジェシーにそう命じた。

 人間界、宮原家。慎一が眠れない夜を過ごしていた。
エレーナ、今頃どうしているのだろう。
なんで、こんなことになったんだろう。自分が何か悪いことをしたのだろうか?
あれこれ考えをめぐらせる。
天使召喚術を使えないのは違反。慎一は、ジェシー・クリスタルの言葉を思い出していた。

 突然、激しい光とともに慎一の前にジェシーが、姿を現した。
「ジェシー・クリスタル! そうだ、エレーナは?」
「エレーナは、謹慎中だ。それより幹部会からの命令でお前を迎えに来た。
今から私と一緒に天上界へ来い」
ジェシーは、慎一に同行を求める。
「天上界が俺を?」
「幹部会が、契約者のお前からも直接話を聴きたいとの意向だ」