こんな気持ちじゃ他の人を幸せになんか出来ない」
エレーナは振り返り、慎一に抱きついた。そして泣きじゃくった。

 2、3日たった。
「ゲホッ、ゲホッ」
慎一は、最近体調が悪い。風邪だろうか? 母親の入院、夏穂の学校の事、
さらに、ルーシーの研修、天上界の来客の応対など、とにかく忙しかった。
そして、徐々に迫るエレーナやさやかとの別れ……
慎一は、自分でも気づかないうちに疲れていた。
「ゲホッ」
「慎一さん風邪ですか?」
ルーシーが心配した。
「大丈夫、大したことない。それより今日、天上界に行くんだよな?」
「はい、私の研修がいつ終わるか決まるそうです」
「そうか、早く一人前のお墨付きが得られるといいな」
「あの、私、この研修が慎一さんにとってもプラスになるようにします。
私に何が出来るか分からないけど。でも慎一さんやエレーナさんのためになるように頑張ります。
今更、こんなことを言うのも変だけど、慎一さん達にはいろいろお世話になったし、だから」
ルーシーは、慎一達の事もちゃんと考えていた。
以前だったら、よく考えもせずに突っ走っていたルーシー。
慎一の知らないうちにそこまで成長していたのだ。

 昼頃、また天上界から来客が来た。契約の相談である。
慎一は、エレーナやさやかと相談に応じた。
「ゲホッ、ゲホッ」
「大丈夫ですか?」
エレーナが心配する。
「大丈夫、ただの風邪だよ」
「でも顔色が悪いわよ。少し横になったら?」
さやかは、来客の事は自分たちに任せて休むよう勧める。
「ありがとう、でも大したことないから。それよりサラ・シンフォニーは今頃
どうしているかな? 大学とか芸能活動の事もあるだろうし、
夏穂ちゃんと綾香ちゃんの事も何とかしないとな。何…とか…しないと…」
バタン! 慎一は突然倒れ、そのまま意識を失った。
「慎一さん!」
「慎一!」
エレーナ達が慌てて介抱するが、慎一の意識は戻らない。

 一方、その日の夕方、天上界では……
「イザベラ幹部、お願いがあります」
ルーシーが、イザべラ幹部に申し出た。
「お願いとは?」
彼女が、エレガンス幹部にしたお願いとは?