幸せになろう

なぜ、自分に打ち明けてくれなかったのだろう。 
何時もそばにいたのに、どうして気づいてあげられなかったのだろう。
もっと早く出会っていれば、慎一を助けられたかもしれない。
そう思うと、エレーナは胸が痛んだ。
慎一のため、自分に何が出来るのか? エレーナは思い悩んだ。

 その日の夜、慎一の部屋。
「慎一さん、ちょっといいですか?」
エレーナが部屋に入ってきた。
「慎一さんが高校の頃付き合っていた女性は、どんな方ですか?」
彼女は、慎一の過去の恋人が気になっていた。
「気になる?」
「うん」
「軽い感じで今風の娘。今思えば、あいつは俺の事、たいした好きじゃなかったのかもな。
あいつ、自分から付き合えとか言っておきながら、文句ばかり言って、自己主張していたからな。
それに、全然俺の事を理解する気なかったし、パートナーが大変な時にそばに居てくれないんじゃ、そんなの恋人とは言わないよ。
振られた時はショックだったけど、今は、別れて良かったと思っている」
慎一は、以外にあっさりとしていた。
「じゃあ、今はその人のことは気にしていないんですか?」
「全然、気にしていないよ。それに、もし今もあいつとつき合っていたら、
君との関係はなかった。だからこれでよかったんだ」
「私、慎一さんがその事を、ずっと気にしているのかと思いました」
過去の苦労のせいで恋人を失った慎一を思うと、エレーナは、辛かった。
それに、慎一がまだ昔の彼女への思いがあるのではという気がし、エレーナは複雑な気持ちだったのだ。
慎一の言葉に、エレーナの不安は消えた。
「ねえ、慎一さんは知っていますか? 私達天使は、全て女性なんです」
「そう言われてみれば、天上界に行った時も、マイナスエネルギーを浄化してもらった時も
みんな女性だったな。男性天使は見た事がない」
「天使と人間の女性が契約した場合、親友みたいになるんです。
でも、男性と契約した場合、恋人同士になってしまうことも少なくないんです」
「そうなのか」
その夜は、不思議だった。さっきまで家族とギクシャクしていたのが嘘のように
エレーナとの優しい時間だけが過ぎていったのだった。

 次の日の事だった。
みんなで朝食を食べていたとき、突然和江が食卓に寝込むように倒れた。
そして、大量の血を吐いた。
「お母さん?」
「和江さん?」
さやかやエレーナが声かけたが、苦しむばかり。